このヘラシギの左すねには金属リング、右すねには水色のフラッグがついていました。
その識別標識は、2002年7月、ロシア東北端チュコト自治区にあるコリューチンスカヤ湾口のベリャカ岬で、
孵化直後の雛(15羽)にリングをつけ、放鳥された個体です。
おどろくことに、わずか生後2ヵ月ほどで日本(三番瀬)へ飛来したことになります。
三番瀬や谷津干潟の中継地で休息や捕食をしながらエネルギーを蓄えたあと、
さらに南下し、中国南岸やインド東岸方面の越冬地へ渡ります。
その道中の無事を願って、また元気な姿を見せて欲しいものですね。
ヘラシギ
種 名 チドリ目/シギ科/ヘラシギ 箆鷸* Eurynorhynchus pygmaeus Spoon-billed Sandpiper*
時 期 旅鳥。
形 態 L 150mm 嘴峰20-21mm 翼長98-103mm 尾長34-39mm ふ蹠20-21mm.
雌雄同色。 夏冬異色。
嘴は黒く、扁平している。 嘴の先端は既に雛のときからスプーン(へら)形で、他のシギ類と著しく異なる。
夏羽: 頭部、頸部が赤褐色で、頭上、頸側、前頸、上胸、胸側に黒褐色の縦斑がある。
上面は黒褐色、赤褐色、灰色のまだらで、胸から下面は白い。
冬羽: 赤褐色が消え、上面は黒褐色と灰褐色のまだらで、白い眉斑が目立つ。 下面は白色で斑点がない。
幼鳥: 上面が黒く、額から眉斑は白い。 頭頂、耳羽、上面は黒褐色で、羽縁は白い。
喉から尾筒までは白く、胸側は淡い褐色。
鳴き声:「プリー」
生 態
分 布 旧北区分布型。
ユーラシア大陸東端のチュコト半島とアルジナの限られた地域に繁殖分布し、
冬期は、ベンガル湾沿岸に渡って越冬する。
日本には、まれな旅鳥として8-9月、3-5月に渡来する。 秋の渡り期の方が多い。
海岸の干砂浜や、干潟で見られる。 絶滅危惧種に指定されている。
生息地 繁殖地は、潟湖、淡水湖、河川などのふちで、草が生えた砂地、砂利の堆積地、砂利ツンドラ、
乾燥ツンドラで営巣する。
採 食 ごく浅く水につかる砂泥地で、ヘラ状の嘴を左右に振りながら、昆虫、甲殻類、種子などを採食する。
ヘラ状の嘴をもっているヘラサギや、クロツラヘラサギも嘴を左右に振りながら採食する。
繁 殖 繁殖期は、6-7月。 一夫一妻。
巣づくり: オスが地上8-10mぐらいに、いくつかの窪みをつくり、
メスがその一つを選んで、コケ類、草、木の葉などの巣材を敷いて巣をつくる。
産卵: 1巣卵数、3-4個、4個が多い。
抱卵: 雌雄交代で抱卵する説、メスだけで抱卵する説などあり、明確になっていない。
孵化: 21-22日ほどで孵化する。 雛は早成性の離巣性。
育雛: 雌雄で子育てをする説、メスだけで子育てをする説などがあり、明確になっていない。
巣立つ日数も明確になっていない。
非繁殖期は、10羽以下の群れをつくる。
ディスプレイは、フライトディスプレイをする。
フライトディスプレイは、地上10-20mを ゆっくり飛び、速い羽ばたきの上昇と、滑空降下を繰り返すスイッチバック型で、
オス1羽だけで行ったり、グループで行ったりする。
絶滅指標 絶滅危惧1B類 (EN)