帯・湖沼静止水面の鳥

世界で21種のカイツブリ科について

カイツブリ類は約 7千万年の間、湖沼などを生息場所としてきた古い生活史があります。

カイツブリ科は、北極・南極の両極地方を除いた全大陸に分布していますが、全ての種が平均分布している訳ではなく、
種の分布地域は、かれらの生活環境に適した内陸水面の湖沼があるため、ごく限られた地域だけで生息する種と、
とび離れた地域に生息する種もいます。
日本で観察されたカイツブリ類は、カイツブリ、アカエリカイツブリ、ハジロカイツブリ、カンムリカイツブリ、
ミミカイツブリの1属5種。 日本での繁殖は、カイツブリ、アカエリカイツブリ、カンムリカイツブリの3種。

中型から大型の鳥で、雌雄の形態は同色種が多く、頭部は小さく、首は長く、ずんぐりした体形。
歩行は不得手で、繁殖期以外はほとんど陸に上がらないが、潜水の名手..... 潜水に比べると飛行も不得手。

体の後端についた脚の膝関節には、
潜水性鳥類に独特の発達した脛骨突起があります。
それは、非常に柔軟性をもっていて、水中で自由自在に動かせます。
第1趾から第4趾まで全趾には、木の葉状の水の役目をする弁膜がついている弁足で、
船のスクリューの役目をして自由自在に泳げます。
羽毛は、脂腺からの分泌物によって水をはじき、羽毛の間にある空気を排出し、
気嚢を空にするだけで潜れます。


青い部分が気嚢(きのう),赤い部分が肺。
水に潜ることが非常に優れ、冬期は沿岸にも飛来し、活発に潜水して主に小魚類を採食します。
自分の羽毛を食べる・・その訳は、魚類を食べて消化されない魚の骨を固め、
ペリット状にして吐き出すためです。
中・南米の高地には、潜水の名手であっても飛行能力をまったく失った3種がいます。

繁殖期は、一夫一妻。 つがいが縄張りをつくって分散。
縄張り意識は、大半の種は縄張り意識が強く、巣を中心に一定の範囲の水面に縄張りを形成して縄張りを守ります。
巣づくりは、淡水の湖沼や沼などの縄張り内に、たくさんの水草や茎などの巣材を用いて「浮き巣」をつくります。
非繁殖期、求愛行動は、頭や首の飾り羽を使い、複雑で精巧な儀式化された求愛行動を行うのもカイツブリ類の特徴で、
この複雑な求愛行動と共通する種との比較研究によって、動物の行動と進化の解明が大きく前進したとのことです。
求愛行動は、繁殖地だけでなく、渡りの途中や、渡り前後の越冬地でも観察できます。

カイツブリ科 3種

カイツブリ成鳥 カイツブリ幼鳥
カイツブリ成鳥 2002.1.13 東京都
カイツブリ幼鳥 2002.1.13
カイツブリ
種 名 カイツブリ目/カイツブリ科/カイツブリ 鳰 Podiceps roficollis poggei Little Grebe カイツブリ類の中で最もふつうに見られる種。
時 期 留鳥(本州中部以南) 漂鳥(東北以北と積雪の多い地域では夏)。
形 態 L260mm W450mm 嘴峰19-23mm 翼長94-108mm 尾長30-36mm ふ蹠34-38mm
 
   夏羽: 上面が黒褐色、頸・頬は栗色で、胸は淡い褐色。胸から下面は白色。
    冬羽: 上面が灰褐色、
頸・頬・胸は淡い褐色。胸・喉から下面は白色。
    嘴: 黒く、先端は黄色。  光彩: 黄白。  脚: 体の後ろ端にある。
    鳴き声:「キリッキリッキリッ」するどい声。

生   態
分 布 旧北区、東洋区、エチオピア区。
    ユーラシア大陸の温帯・熱帯、サハラ砂漠を除くアフリカ大陸、フィリピン、ボルネオ島、ジャワ島、ソロモン諸島。
    日本では北海道から九州まで、全国的に分布し、各地で繁殖する。

生 息 主に平野部の池、湖沼・堀、河川で生息し、秋・冬は下流域でも生息する。
    ヨシが密生する水面で生息。採食時は広々としたした水面に出る。
採 食 脚は非常に柔軟で自由自在に動かすことが可能。足趾についている木の葉状の弁膜で水を掻いて潜水し、
    フナやタナゴなどの小さな魚類、水生甲殻類、昆虫、軟体動物などを採食し、植物質を食べることもある。潜水は最長30秒ほど。
    潜水せず、水面の魚類を捕らえることもある。

繁 殖 繁殖期は2-10月、年に2-3回。 一夫一妻。
    巣づくり: オス・メスが共同作業で、たくさんの水草の葉ゃ茎を使って、水面に浮いた皿形の巣(浮き巣)をつくる。
    浮き巣の水面下には、水上に見える巣の5-6倍の厚さがある。
    つがいは、水位の変化に備えて5-10数個も予備の巣をつくる (水位の変化で縄張りの位置が変わることもある)。

    産卵: 1巣卵数 4-6個。
    抱卵: 雌雄交替で交代で抱卵する。親が巣から離れるときは卵が天敵に見つけられないように巣材の葉で覆い隠す。
    孵化: 20-52日。 孵化した雛は早成性で、すぐに水面を泳ぐことができる。
    雛が疲れると親の背に乗って休み、天敵に気づいた親は雛を背中に乗せたまま潜水する。
    育雛: 雛には まだ魚を捕れないため、2カ月余り親は雛へ給餌するが、その後、雛を追い回して独立を促す。

   
 縄張り意識が非常に強く、先ずオスが「キリッキリッキリッ」鋭い声を発して突進し、つづいてメスも縄張り争いに加わり、侵入個体を追い出す。
    春先、オスからメスへ小魚・水草を与える求愛給餌行動をする。 冬期は群れをつくる。

カイツブリ カイツブリの水浴び
カイツブリ成鳥 2000.11.25  習志野市
水浴びをするカイツブリ成鳥 2000.11.25
幼鳥へ給餌する魚をとった親鳥
親から魚をもらった幼鳥
潜って採食する鳥は助走して飛びたつ


ハジロカイツブリ

ハジロカイツブリ夏羽 ハジロカイツブリ飾り羽
ハジロカイツブリ成鳥夏羽 2002.4.8 三番瀬
ハジロカイツブリ成鳥夏羽 2002.4.8
ハジロカイツブリ
種 名 カイツブリ目/カイツブリ科/ハジロカイツブリ 羽白鳰 Podiceps nigricollis nigricollis Black-necked Grebe
時 期 冬鳥。北海道では旅鳥。
形 態 L300mm W570mm 嘴峰20-22mm 翼長124-136mm 尾長21-37mm ふ蹠41-46mm
    雌雄同色 夏冬異色
    夏羽: 前頸と頸側が黒く、眼の後方から耳羽にかけて扇状に拡がった金栗色の飾り羽がある。 
        頭上、後頭、背は青黒色で胸下から下面は白色。 脚は外側が黒く、内側が鉛色。 飛行時、翼に白帯が見られる。
    冬羽: ミミカイツブリの冬羽と似ているが、嘴はやや上方に反っている。背面にやや青みがあり、頭上の黒色部が眼や耳羽の下まで達する。
    鳴き声: 「ピッピッ」「キッキッ」と鋭い声。

生   態
分 布 全北区、エチオピア区。
    ユーラシア大陸西部、中国東北部、アフリカ大陸北部など。 冬は南下して越冬する。
    日本にはウスリーから中国東北部にかけての繁殖地から冬鳥として越冬に来る。

生息地 海岸近くの湖沼、河口部、内湾、内陸の大きな湖沼や河川の水草が茂った場所に生息。
採 食 他のカイツブリ類と同様に、潜水が得意で小魚類、水生甲殻類、昆虫などを採食する。動物質以外に藻類なども食べる。
繁 殖 繁殖回数は年に1-2回。 一夫一妻。
    巣づくり: オス・メスが共同作業で、たくさんの水草の葉ゃ茎を使って、水面に浮いた皿形の巣(浮き巣)をつくる。
    産卵: 1巣卵数、3-4個。
    抱卵: 
オス・メス交代で抱卵をする。抱卵期に親が巣を離れるときは卵を天敵に狙われないように水草で覆い隠す。
    孵化: 20-22日間。 
    育雛: オス・メスが共同で行う。 雛が巣立つまでに21日以上かかる。

    
つがい形成は繁殖地へ移動の途中や、早いものは越冬地で形成される。越冬地では群でいることが多い。

カンムリカイツブリ 絶滅の恐れがある地域個体群 (LP)

カンムリカイツブリ冠羽 カンムリカイツブリ飾り羽
カンムリカイツブリ カンムリカイツブリ
種 名 カイツブリ目/カイツブリ科/ 冠鳰
    Podiceps cristatus cristatus Great Crested Grebe
時 期 冬鳥。北海道では旅鳥。本州で一部繁殖。
形 態 L560mm W850mm 嘴峰45-58mm 翼長175-185mm
    ふ蹠62-68mm  大型のカイツブリ。
    雌雄同色。夏冬異色。
    夏羽: 黒い冠羽と頸の周囲にえり巻き状で栗色の飾り羽がある。
    後頸は黒く、顔・喉は白い。
    上面と翼は灰褐色で、翼には白斑があり、頸から下は白く、
    脇は栗色。 嘴は赤褐色。
    冬羽: 頸の飾り羽がなく、前頸、頸側は汚白色。
鳴き声 「カッカッ」




2002.4.8 三番瀬
生   態
分 布 旧北区、オーストラリア区、エチオピア区。
    ユーラシア大陸の中緯度地方に広く分布するほか、オーストラリア、アフリカ、ニュージーランド南東部など、お互いに離れた繁殖地を持つ。
    日本では1972年、下北半島小川原湖で初めての繁殖記録がある。
    個体数が少ないため、危急種に指定されている。

生息地 海岸や海岸に近い淡水湖沼、大きな河川に多く、希には内陸の湖沼・大河川でも生息。
採 食 活発に潜水を繰り返し、魚類を好んで採食する。ほかには水生の甲殻類、昆虫、イモリやオタマジャクシなどを採食する。
    カンムリカイツブリは、カイツブリ類の中では最も大型であることから、カイツブリの潜水時間30秒に対し、50秒ほど潜水することができる。

繁 殖 つがいが一定の範囲の水面に縄張りを形成し、分散する。 繁殖期は3-8月、年に1-2回。 一夫一妻。
    巣づくり: オス・メスが共同作業で、水草が茂った浅瀬に、たくさんの水草の葉ゃ茎を使って、水面に浮いた皿形の巣(浮き巣)をつくる。
    産卵: 1巣卵数、3-4個。
    抱卵: 雌雄交代で抱卵をする。抱卵期に親が巣を離れるときは卵を天敵に狙われないように水草で覆い隠す。
    孵化: 27-29日。
    育雛: 雌雄が子育てをする。 雛は約70日で独立する。

    
日本の繁殖地では3月下旬、求愛行動が盛ん。群れでいる。水面で首を長く伸ばしているときが多い。
    オス・メスが向かい合って、嘴を左右に振りながら「カッカッ」と鳴き合うディスプレイなど、多種多様なディスプレイをする。
    オスの声は「ガァーガァー」と鳴く。

絶滅指標 絶滅の恐れがある地域個体群 (LP)

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