我々の命を救う「カブトガニ」が、今世紀中に絶滅のおそれ!
2億年前から姿を変えないカブトガニの血液は、現代医学を変え、我々の命を救っている。
人類は繁栄のためにカブトガニの生息地も破壊し、絶滅の危機にまで追い込んだ。
「共生・共栄なしでは、人命にも危機が来る」ことを、カブトガニが我々に教えている。
【カブトガニ】学名 Tachypleus Tridentatus 節足動物門 / 鋏角亜門 / カブトガニ網(剣尾網)/ カブトガニ目(剣尾目)
雌雄同色。体は、鉄兜形の前体・後体と、尾剣の3つからなっており、メスは全長 約60cm 体重 約3.0kg オスより大きい。
内湾性の干潟を好む。幼生は汽水・川に近い干潟で微生物などを捕食・生育。成体は浅海域・干潟でゴカイや貝類などを捕食。
生息地は、瀬戸内海沿岸と九州北部。カブトガニの血液は医学、我々の日常食品の衛生検査にも利用している。 絶滅危惧種1類
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カブトガニの不思議と感動 カブトガニの生態・生活をとおして、その生活環境を見てみましょう 形 態 前 体 オス・メスの形態 / カブトガニの口(くち) / 干潟で何を食べて、どのような生活を..? わたしたちに有用なカブトガニ その保護対策に必要なものは・・・ カブトガニの保護 日本での生息数と生息地が危機 / 浅海域の生態系の現状 / 保護 どのような保護対策が必要か / 世界のカブトガニ 世界に生息するカブトガニ 2属4種の形態と生息地 |
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カブトガニの進化 | |||||
カブトガニの祖先は三葉虫 カブトガニの祖先は、古生代(カンブリア紀)に栄えた「三葉虫」といわれています。 |
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なぜ、恐竜は滅び、カブトガニは生きられたの? 不思議? 恐竜が絶滅した説は数々ありますが、例えば、気温の低下で絶滅したと考えた場合・・・ 生きている化石・カブトガニ シーラカンス、オウムガイ、メタセコイヤなど、多くの生物(動植物)が「生きている化石」と、よばれていますが、 |
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カブトガニの化石 ティラノザウルスや、プテラノドンなどの恐竜時代(2億年前)、カブトガニが現在と同じような形になって、恐竜と共に生きていました。 写真は、ドイツ・バイエルン地方で発見された、ジュラ紀のカブトガニ化石。 化石からカブトガニの足跡を見ることができます。 |
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約1億5000万年前のカブトガニの化石
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なぜ、カブトガニは進化しなかったの? 他の生物は進化したが、カブトガニは2億年もの間、なぜ進化しなかったのでしょう。 環境が変化する場所で生息する生物は カブトガニは、上記のどれにも該当していませんが、絶滅しなかった。 それでは、なぜ、進化もせず、移動もせず、絶滅しなかったの? 不思議? |
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絶滅せず、生きてきたカブトガニでさえ、 「生活できる汽水・干潟の環境」がなければ絶滅する カブトガニに適した生息環境とは... 1. カブトガニは、内湾性の動物。 生息する波の穏やかな浅海域 が必要 3つの生態系が汚染されてない好条件でなければ、カブトガニを絶滅に追い込んでしまいます。 |
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カブトガニの生活・生態
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カブトガニの活動期間と生活 活動期間、カブトガニの生活行動は、内湾の汽水や干潟で、抱合・産卵・孵化....などの繁殖と、 |
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産 卵
「産卵」は、7・8月の夜間、大潮の満潮時に産卵をしますが、希には小潮や昼間も産卵。 なぜ、大潮のときに産卵するの? カブトガニの繁殖から全ての生活に適した...干潟と汽水の環境 |
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干潮時に現れた産卵跡 大潮の満潮時、海底の砂を掘って 干潮時に現れた干潟で、卵は太陽に暖められます。 |
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大潮の満潮時、海底の砂の中に産みつけた カブトガニの卵 右下に黄色っぽい卵が見えます。 産卵は、海底の砂に潜って 干潟の砂は、カブトガニが潜りやすい砂であって、 |
産卵行動のとき、 海面に出る泡の輪 カブトガニが産卵時、 |
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干潟の砂の中にたくさんの空気が含まれていることが |
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カブトガニの卵 卵の大きさは、直径 約3mm 砂の中の酸素は、卵を酸欠から守ります |
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発 生 カブトガニの幼生誕生 孵化した幼生に必要な河口・汽水 産卵直後、カブトガニの卵の大きさは直径約 3mm カブトガニの脱皮・成長 カブトガニは、ほかの節足動物と同じように、脱皮して成長していきます。 なぜ、大きな体が 小さな殻(から)に収まっていたの? |
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カブトガニの成長と寿命
カブトガニの寿命は??? カブトガニの成長や寿命については、まだ、わかっていません。 |
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カブトガニの形態
カブトガニの体を大きく3つに分けると、前体(ぜんたい)・後体(こうたい)・尾剣(びけん)からなっています。 メス 全長 約60cm 重さ 約 3.0kg メスはオスよりも大きい 前 体 カブトガニの前体は、鉄兜? 戦車? のようで、馬蹄形。 |
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オスの前縁には「へこみ」がある
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メスの前縁には「へこみ」がない
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カブトガニの「つがい」 | |||||||
なぜ、オスには「へこみ」があるの? |
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カブトガニは、一夫 一妻制の動物で、ペアになったオス・メスは、いつもくっついたまま行動します。 | |||||||
カブトガニは、 干潟で何を食べて、どのような生活をしているの? 前体の腹面には、一対の鋏角と5対の歩脚に囲まれた口(クチ)があります。 |
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ゴカイを食べているカブトガニ
カブトガニは、冬眠から覚める6月半ば頃、海水温が18度になると活動をはじめ、抱合・産卵・孵化....などの繁殖と、採餌・休息・脱皮など、生活の全てが内湾の汽水や干潟で、行われています。 干潟は、カブトガニをはじめ多くの生物にとって、重要な生息場所です。 干潟では、カブトガニの成体や幼生が、ゴカイやアサリなどの底生生物を捕食しています。 |
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干潟には、生物の餌となる有機物が多く含まれているため、ゴカイや貝類が多く生息し、カブトガニをはじめとする生物の重要な餌場です。 このことからも、生物の個体を保護するのみでなく、その生物の生息環境を保全(守る)することこそ、最も大切なのです。 カブトガニは、進化も、移動も、絶滅もせず、現在まで生きてきたが、今世紀中に絶滅のおそれがある。そのカブトガニが今、欲しがっているのは、過去にあった「生活の全てができる干潟の環境」に違いありません。 |
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後 体
カブトガニの後体は、ほぼ6角形。 その複雑な体が脱皮をさらに困難にさせて、脱皮時の死因につながっています。 |
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オスの後体の両側には、6対の長いトゲ | メスの後体の両側には、3対の長いトゲと短いトゲ | ||||
尾 剣 尾剣は、後方へいくほどだんだん細く、その断面は3角形。 |
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カブトガニの天敵 それぞれの生物は、それぞれの生態系に応じて、互いに密接なつながりをもって生きています。 猛禽類 → 水鳥 (サギ、カモメなど)→ 甲殻類 ・魚類 → カブトガニ → 貝類・ゴカイなど → 微生物 食物連鎖は、生態系のバランスを保つ、自然の摂理です。 1945年、国内に80,000haあった干潟が、現在、50,000haになってしまいました。 地球が誕生して46億年、その地球の歴史を1年間に短縮してみると..... カブトガニがもっとも恐れている実の天敵は、生息地の環境を破壊する人類が天敵かもしれません。 |
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「生きている化石」カブトガニが現代医学を変え、私たちの命を救っている 「カブトガニが絶滅すると我々の生命にも危機がくる」 人の生命を奪う大腸菌や、サルモネラ菌などの「内毒素」検査に、以前は大変な時間がかかっていました。 カブトガニの血液利用は、現在、肝臓疾患、感染症など医学をはじめ、 そのカブトガニは人類に必要不可欠ですが、カブトガニの生息数は、世界的に減少しています。 そこで、「自然と人とのバランスを保つ利用」を考え、1尾の成体の血液(300cc)から3分の1にあたる 多様性生物資源の恵みを持続可能な利用 私たちの生活は、衣食住、紙、医療、燃料などにいたるまで、生物からの恵みを受けて成り立っています。 しかし、人間の経済活動によって、熱帯林、湿原、川、干潟などの生態系が失われてきて、 世代を超えた自然の利用を考え、生物の多様性を減少させず、維持可能な利用 をしていくことが大切です。 |
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カブトガニの保護と、その対策 日本での生息数と生息地が危機 人類の活動が、身近な生き物の生息地を、埋め立て・干拓などで著しく減少させてしまった。 山陽地方では、岡山県:日生町・笠岡市笠岡湾。 広島県:尾道市・竹原市・江田島町。 山口県:秋穂町・山陽町・下関市、 1945年、国内に80,000haあった干潟が、現在、50,000haになってしまいました。 しかし、人間の経済活動によって、熱帯林、湿原、川、干潟などの生態系を、いちじるしく壊してきました。 生物の絶滅数 1928年 昭和 3年、生江浜海岸の生息地が「天然記念物カブトガニ繁殖地」として国の指定を受けた。 1971年 神島水道を新たに繁殖地として追加指定した。 個体・環境の保護だけでなく 破壊したカブトガニの生息地を、もともとあった自然のままに再生・回復させることが最も必要。 それらが欠ければ、カブトガニを絶滅の危機から救えません。 干潟の重要性に早くから気づいた欧州では、1980年代後半からオランダやイタリアの干潟や湿地を回復する試みを始め、 環境教育については、生物を観察・研究し、生物のつながり、生物と人のつながりなどを理解することで保全につなげる。 私たちは何をすべきか 地球上の生物は生態系という一つの環のなかで深くかかわりあい、つながって生きています。 1. 各地固有の生物の多様性を、その地域の特性に応じて適切に保全する。 生物多様性保全に果たす 自然教育の役割
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世界のカブトガニ 4種の形態の違い・生息地
北アメリカ東岸一帯とアジア東南海域に、Tachypleus属とLimulus属の2属4 種のカブトガニがいます。 カブトガニ Tachypleus tridentatus 4 種中、最も大きい ミナミカブトガニ Tachypleus gigas マルオカブトガニ Tachypleus rotundicauda 尾剣の断面が丸い(他のカブトガニは3角形) アメリカカブトガニ Limulus polyphemus |
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カブトガニの分布(東南アジア産)
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アメリカカブトガニの分布
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赤色部分はアメリカカブトガニの分布
アメリカ東岸メーン州からユカタン半島にかけての一帯に分布している。 |
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カブトガニの写真は、著作権所有者:カメラマン佐藤義明氏の
ご厚意により掲載させていただいております。
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