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我々の命を救う「カブトガニ」が、今世紀中に絶滅のおそれ!
2億年前から姿を変えないカブトガニの血液は、現代医学を変え、我々の命を救っている。
人類は繁栄のためにカブトガニの生息地も破壊し、絶滅の危機にまで追い込んだ。
「共生・共栄なしでは、人命にも危機が来る」ことを、カブトガニが我々に教えている。

カブトガニ学名 Tachypleus Tridentatus 節足動物門 / 鋏角亜門 / カブトガニ網(剣尾網)/ カブトガニ目(剣尾目)
雌雄同色。体は、鉄兜形の前体・後体と、尾剣の3つからなっており、メスは全長 約60cm 体重 約3.0kg オスより大きい。
内湾性の干潟を好む。幼生は汽水・川に近い干潟で微生物などを捕食・生育。成体は浅海域・干潟でゴカイや貝類などを捕食。
生息地は、瀬戸内海沿岸と九州北部。カブトガニの血液は医学、我々の日常食品の衛生検査にも利用している。
絶滅危惧種1類


  Contents  カブトガニ

 カブトガニの不思議と感動
  カブトガニの進化 祖先は三葉虫 / なぜ、恐竜は滅び、カブトガニは生きられたのか? その不思議 / 生きている化石 /
           なぜ、カブトガニは2億年前から進化もせず、移動もせず、絶滅しなかったの?

 カブトガニの生態・生活をとおして、その生活環境を見てみましょう
  生 態・生活環境 絶滅せず、生きてきたカブトガニでさえ「生活できる汽水・干潟の環境」がなければ絶滅する
  生態1 産 卵  活動期間と生活 / 産卵行動 / なぜ、大潮のとき産卵するの? /
繁殖から全ての生活に適した環境 / 卵
  生態2 発 生  幼生誕生 /
幼生に必要な河口・汽水 / カブトガニの脱皮 / 大きな体が小さな殻に収まっていた?
  生態3 成 長  カブトガニの成長と寿命は...?

      形 態  前 体 オス・メスの形態 / カブトガニの口(くち) / 干潟で何を食べて、どのような生活を..?
           
後 体 後体のオス・メスの形態   尾 剣 尾剣の役割は...?

 わたしたちに有用なカブトガニ その保護対策に必要なものは・・・
  カブトガニの天敵 カブトガニが最も恐れている天敵は・・・
  カブトガニの血液 「生きている化石」カブトガニが現代医学を変え人命を救う / 医学や、日常食品の衛生管理にも利用 /
           
生物資源の恵みを持続可能な利用

  カブトガニの保護 日本での生息数と生息地が危機 / 浅海域の生態系の現状 / 保護 どのような保護対策が必要か /
           破壊された
生息地をもともとあった自然のままに再生し、人命を救うカブトガニを絶滅させない /
           
私たちは何をすべきか / 生物多様性保全

  世界のカブトガニ 世界に生息するカブトガニ 2属4種の形態と生息地

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カブトガニの進化

カブトガニの祖先は三葉虫
カンブリア紀(約5億7000万年前〜5億年前) カブトガニの祖先は 三葉虫、海で大繁栄していた 。
デポン紀(約3億9500万年〜3億4500万年前)カブトガニの祖先は カンブリア紀よりも、カブトガニに近い形になった。
ジュラ紀(約1億9500万年〜1億3600万年前)カブトガニの祖先は 現在の形態とほとんど同じに進化した。

カブトガニの祖先は、古生代(カンブリア紀)に栄えた「三葉虫」といわれています。
その「三葉虫」が進化して「アグラスピス」が生まれ、
「アグラスピス」がさらに進化して一方には『カブトガニ』の祖先が生まれ、
もう一方には「ウミサソリ」が生まれ、ウミサソリは陸上の「クモ」や「サソリ」ヘと進化し、約35,000種にも分化。
一方の『カブトガニ』は、わずか4 種だけ。
その『カブトガニ』は「蟹(かに)」ではなく「クモ」に近い、といわれている..... それは先祖をたどると解けてきます。

カブトガニ(わずかに4 種が現存)
三葉虫  アグラスピス 
ウミサソリ  陸上のクモ・サソリ(約35,000種にも分化)

なぜ、恐竜は滅び、カブトガニは生きられたの? 不思議?
約2億年前、カブトガニは現在と同じような体形になって、恐竜と共に生きていました。
お互いに環境変化の襲来をうけましたが、恐竜は滅び、カブトガニは生き残りました。

恐竜が絶滅した説は数々ありますが、例えば、気温の低下で絶滅したと考えた場合・・・
恐竜は、体が大きい温血動物... 多量の食料を必要とし、低温化と食料不足に耐えることができず滅びた。
カブトガニは、体が小さい冷血動物... 少量の食料で生きられる。そして、冬眠する生物。
そのうえ、体脂肪を蓄え、1〜2年間も絶食状態で生きられる..... カブトガニの驚異!
それで、カブトガニは絶滅しなかった・・・そこに感動!がありました。

生きている化石・カブトガニ
「生きている化石」とは、何億年前・何千万年前に大繁栄し、今なお当時からの特徴を持ち続けながら生きている
系統の生物のこと。 「生きた化石」生物は、学問上、非常に貴重な資料となっています。

シーラカンス、オウムガイ、メタセコイヤなど、多くの生物(動植物)が「生きている化石」と、よばれていますが、
「生きている化石」という言葉は、イギリスの生物学者 E. R. ランケスター氏(1847〜1929年)が、カブトガニに
初めて使った言葉。

カブトガニの化石

ティラノザウルスや、プテラノドンなどの恐竜時代(2億年前)、カブトガニが現在と同じような形になって、恐竜と共に生きていました。

写真は、ドイツ・バイエルン地方で発見された、ジュラ紀のカブトガニ化石。 化石からカブトガニの足跡を見ることができます。

約1億5000万年前のカブトガニの化石
なぜ、カブトガニは進化しなかったの?
他の生物は進化したが、カブトガニは2億年もの間、なぜ進化しなかったのでしょう。

 環境が変化する場所で生息する生物は
   1. 変化する環境に適応して生き残るために進化していく
   2. その生物の生活環境にあった(似た)場所へ移動する 
      例、気候の温暖化に伴って高山へ移動した...(雷鳥・ライチョウ
   3. 進化も、移動もしない場合は、絶滅する

カブトガニは、上記のどれにも該当していませんが、絶滅しなかった。

それでは、なぜ、進化もせず、移動もせず、絶滅しなかったの? 不思議?
約2億年前から現在まで、カブトガニの成体は浅海域・干潟で、その幼生などは河口付近の汽水で生息しています。
カブトガニは、その生息海域で呼吸器(鰓書 = えらしょ)が濡れていれば、
1〜2週間も生きることが可能。 
また、
1〜2年間は餌も食べずに生きられ、冬眠生活ができる。
それで、移動・進化しなくても生きることが可能だったので、進化も、移動も、絶滅もしなかった。
と、いうことは、2億年前、カブトガニは既に進化していたのです。
『備えあれば、憂いなし』・・・備わっていたカブトガニの生態に感動!

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絶滅せず、生きてきたカブトガニでさえ、
  
「生活できる汽水・干潟の環境」がなければ絶滅する

カブトガニに適した生息環境とは...

   1. カブトガニは、内湾性の動物。 生息する波の穏やかな浅海域 が必要
   2. 幼生などは河口付近の汽水で生息している。 生息地の近くに河川 が必要
   3. 幼生の生育場所と産卵場、餌場として、広大な干潟に隣接する砂浜 が必要

3つの生態系が汚染されてない好条件でなければ、カブトガニを絶滅に追い込んでしまいます。
それでは「カブトガニの生活・生態」をとおして、彼らの命に最も必要な「生活の環境」を見てみましょう。


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カブトガニの生活・生態

カブトガニの活動期間と生活
カブトガニの活動は、海水の温度が18度以上になると活動を始めます。
カブトガニの活動期間は、6月〜9月までの約3カ月と短かい。
10月〜6月の間は、海水温が下がるとともに、水深20mほどの海底の砂に潜って、捕食しないで冬眠

活動期間、カブトガニの生活行動は、内湾の汽水干潟で、抱合産卵孵化....などの繁殖と、
採餌休息脱皮など、生活の全てが行われています。

産 卵

産卵」は、7・8月の夜間、大潮満潮時に産卵をしますが、希には小潮や昼間も産卵。
「つがい」のオス・メスは、抱合したまま産卵。

なぜ、大潮のときに産卵するの?
それには、理由があります。
カブトガニが大潮に産卵するのは、大潮の満潮のほうが小潮・中潮の満潮よりも潮位が上がるので、
満潮時、最も岸よりの砂浜・干潟が海の底になります。
カブトガニが大潮の上げ潮に乗って来て、最も岸寄りの海底の砂に産卵しておくと、
干潮時に現れた干潟で、卵が太陽に暖められて孵化させられる。
また、砂の中の卵は波から守れるし、外敵からも守れる、というカブトガニの知恵からです。

カブトガニの繁殖から全ての生活に適した...干潟と汽水の環境
カブトガニは約2億年前から現在まで、成体は海水域で、幼生などは河口付近の汽水で生息しています。

干潮時に現れた産卵跡

大潮の満潮時、海底の砂を掘って
産卵、移動、再び、産卵、少しずつ移動しながら
産卵していきます。
それには、掘りやすい砂が必要です。

干潮時に現れた干潟で、卵は太陽に暖められます。

大潮の満潮時、海底の砂の中に産みつけた
カブトガニの卵 
右下に黄色っぽい卵が見えます。

産卵は、海底の砂に潜って
深さ、約15cmのところに卵を産みます。

干潟の砂は、カブトガニが潜りやすい砂であって、
空気が含まれた砂でなければ、卵は酸欠で生きられません。
カブトガニの繁殖にも干潟の砂は、とても重要なのです。

産卵行動のとき、
海面に出る泡の輪

カブトガニが産卵時、
海底の砂を掘る・潜る...
その砂の中の空気が
海面に出た泡

干潟の砂の中にたくさんの空気が含まれていることが
必要です。
多くの空気を砂に含んでいることは、
生物たちに酸素を供給してくれます。

カブトガニの卵

卵の大きさは、直径 約3mm
卵の色は、黄をおびた白色
産卵数は、200〜300個
孵卵は、太陽にあたためられて50日前後孵化します。

砂の中の酸素は、卵を酸欠から守ります

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発 生 カブトガニの幼生誕生

孵化した幼生に必要な河口・汽水
幼生などは河口付近の汽水で生息しているので、干潟・砂浜の近くに汚染されていない川が必要です。

   
受精後35日過ぎ、回転運動をする(左)/ 孵化間近、殻からはじけそう(中)/ 孵化... 幼生が出るところ(右)

産卵直後、カブトガニの卵の大きさは直径約 3mm
孵化直前、卵の直径は約6.5mm 
孵化は、卵の中の胚が4 回も脱皮をしたのち、50日前後で孵化し、幼生(第一齢幼生)が誕生します。
孵化した幼生は、三葉虫によく似ていることから「三葉虫型幼生」といわれています。
孵化した幼生は、約1年後に脱皮して第2齢幼生になる間の栄養分は、卵黄だけ。

カブトガニの脱皮・成長

 
カブトガニの脱皮は、写真(左)のように、前体の周縁部が割れて、その隙間から新しい体が出てきます。

カブトガニは、ほかの節足動物と同じように、脱皮して成長していきます。
カブトガニは、脱皮ごとに 1.3〜1.4倍、大きく成長します。
カブトガニの体は、とても複雑な構造をしているため、脱皮時の死亡率も高く、命がけの衣替えです。
カブトガニの脱皮時に必要なのは、波の穏やかな汚染されていない内湾です。

なぜ、大きな体が 小さな殻(から)に収まっていたの?
脱皮する前の小さな殻に、大きな体が入っておれたのは「体が折りたたまれ」て入っていたのです。
脱皮後、体のシワを伸ばしていって、大きくなります。
カブトガニの体の背面には、「たたみシワ」の跡が模様となって残ります。

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カブトガニの成長と寿命

カブトガニの寿命は??? カブトガニの成長や寿命については、まだ、わかっていません。
それは、カブトガニの成長速度が遅いため、脱皮の回数や成体になるまでの年数などがわかっていないからです。
また、カブトガニの体には年齢を読める部位がないことにもよります。
推定では、
オスは15回の脱皮をして13年目に16齢で、
メスは16回の脱皮をして14年目に17齢で成体になる、といわれています。

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カブトガニの形態

カブトガニの体を大きく3つに分けると、前体(ぜんたい)・後体(こうたい)・尾剣(びけん)からなっています。

メス 全長 約60cm  重さ 約 3.0kg メスはオスよりも大きい
オス 全長 約50cm  重さ 約 1.5kg

前 体

カブトガニの前体は、鉄兜? 戦車? のようで、馬蹄形。
背面には、物体を見ることができる大きな複眼と、明暗だけを感じる小さな単眼が1対ずつあって、
腹面には、一対の鋏角と、5対の歩脚に囲まれた口(クチ)があります。

オスの前縁にはへこみがある
メスの前縁には「へこみ」がない
カブトガニの「つがい」

なぜ、オスには「へこみ」があるの?
メスの後体・背面部の凸曲線と、オスの前体の「へこみ」曲線とで、オスとメスは、ぴったり くっついた接合ができます。
オスの体が安定した形で、抱合(抱接)したままでいられます。
(笠岡カブトガニ博物館の記録では、3年間も抱合したままだった)

カブトガニは、一夫 一妻制の動物で、ペアになったオス・メスは、いつもくっついたまま行動します。

カブトガニは、
干潟で何を食べて、どのような生活をしているの?

前体の腹面には、一対の鋏角と5対の歩脚に囲まれた口(クチ)があります。
その形、
よく見ると「クモ」似ていますね。
そう、カブトガニは「カニ」よりも「クモ」や「サソリ」に近い生物なのです。

ゴカイを食べているカブトガニ

カブトガニは、冬眠から覚める6月半ば頃、海水温が18度になると活動をはじめ、抱合産卵孵化....などの繁殖と、採餌休息脱皮など、生活の全てが内湾の汽水干潟で、行われています。

干潟は、カブトガニをはじめ多くの生物にとって、重要な生息場所です。 干潟では、カブトガニの成体や幼生が、ゴカイアサリなどの底生生物捕食しています。

干潟の生き物

干潟には、生物の餌となる有機物が多く含まれているため、ゴカイや貝類が多く生息し、カブトガニをはじめとする生物の重要な餌場です。
また、貝類による水の浄化作用は、海域に大変重要な役割をもっています。

このことからも、生物の個体を保護するのみでなく、その生物の生息環境を保全(守る)することこそ、最も大切なのです。

カブトガニは、進化も、移動も、絶滅もせず、現在まで生きてきたが、今世紀中に絶滅のおそれがある。そのカブトガニが今、欲しがっているのは、過去にあった「生活の全てができる干潟の環境」に違いありません。

後 体

カブトガニの後体は、ほぼ6角形。
後体の腹面には、6対の付属肢(泳ぐため)があって、そのうち5対には (えら)が100〜150枚もあり、
腹部の左右両側には、一対の生殖口があって、腹面は、とても複雑な構造になっています。

その複雑な体が脱皮をさらに困難にさせて、脱皮時の死因につながっています。
脱皮時、複雑な体と殻とが絡みついて命を落とさないためにも、波のおだやかな内湾の河口や干潟が必要です。

オスの後体の両側には、6対の長いトゲ メスの後体の両側には、3対の長いトゲと短いトゲ

尾 剣

尾剣は、後方へいくほどだんだん細く、その断面は3角形。
尾剣を、泳ぐときの舵、体のバランスをとる、外敵に対して威嚇・武器、
仰向けにひっくり返ったときに手の代わりに使って起きる・・などに使う。

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カブトガニの天敵

それぞれの生物は、それぞれの生態系に応じて、互いに密接なつながりをもって生きています。
生態系のつながりの一つに、食物連鎖があります。
カブトガニの天敵は、干潟に来るカモメ、サギ、シギ・チドリなどの鳥類や、干潟に棲むカニといった甲殻類。

猛禽類 水鳥 (サギ、カモメなど) 甲殻類 ・魚類 カブトガニ 貝類・ゴカイなど 微生物 

食物連鎖は、生態系のバランスを保つ、自然の摂理です。
そのことによって、カブトガニが絶滅に追い込まれることは、まずありませんが・・・
人類は、カブトガニが2億年も生き抜いてきた生息環境を、わずか20-30年間で埋立・干拓などによって
破壊してしまいました。

1945年、国内に80,000haあった干潟が、現在、50,000haになってしまいました。
そのうち約40%は有明海にある干潟・・・全国各地に点在する干潟は非常に狭くなってしまいました。

地球が誕生して46億年、その地球の歴史を1年間に短縮してみると.....
『原始の生物が地球上に初めて誕生したのは2月中旬。その後、生物は進化して哺乳類が登場したのは、
ようやく12月の中頃になってから。そして、人類の出現は12月31日の午後4時30分以後になります。』
最後に登場した人類は、他の生物との共有物である地球環境を造りかえ、繁栄してきました。

カブトガニがもっとも恐れている実の天敵は、生息地の環境を破壊する人類が天敵かもしれません。

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「生きている化石」カブトガニが現代医学を変え、私たちの命を救っている
カブトガニの血液利用 我々の日常食品の衛生管理にも...

「カブトガニが絶滅すると我々の生命にも危機がくる」
2億年も前から、ほとんど姿を変えないカブトガニが、現代の医学を変えました。
現在、医学・薬学に多大な貢献をしているカブトガニは、我々に有用な動物です。

人の生命を奪う大腸菌や、サルモネラ菌などの「内毒素」検査に、以前は大変な時間がかかっていました。
カブトガニの微量の血液を使うと、約1時間で内毒素の検査が可能になって以来、人の命が助かっています。
現在、カブトガニの血液を利用することで、100億分の1グラム以下の内毒素を検出することが可能です。

カブトガニの血液利用は、現在、肝臓疾患、感染症など医学をはじめ、
獣医関係、放射性医薬品などの薬学に利用。そして、エイズウイルスに対する抑制作用も判明しています。
また、海や河川の汚染度を測定したり、我々の日常食品の衛生管理にも利用されていて、必要不可欠です。
国内外で、カブトガニの血液の利用が、ますます増えています。

そのカブトガニは人類に必要不可欠ですが、カブトガニの生息数は、世界的に減少しています。
「今世紀中に絶滅のおそれがある・・・」と、危機に瀕しているカブトガニです。
医学へ貢献度が大きいカブトガニといえども、そのカブトガニを殺すことなく採血しなければなりません。

そこで、「自然と人とのバランスを保つ利用」を考え、1尾の成体の血液(300cc)から3分の1にあたる
100〜120ccだけを献血させてもらって海に帰してあげています。
カブトガニは意外と速く回復しているそうです。

多様性生物資源の恵みを持続可能な利用

私たちの生活は、衣食住、紙、医療、燃料などにいたるまで、生物からの恵みを受けて成り立っています。
多様な生物を利用することによって、私たちの生活が成り立っています。
カブトガニの血液を利用して、わたしたちの命が救われていることは、典型的な例です。

しかし、人間の経済活動によって、熱帯林、湿原、川、干潟などの生態系が失われてきて、
近年、動植物が、いちじるしい速度で絶滅に追い込まれています。
彼らが最も恐れているその影響は、いずれ私たちの生活にも及ぶことになるのです。
動植物がすめない環境は、人間も生きていくことができない環境です。
多様な生物がすめる環境こそ、人間も安心してすめる環境ということです。

世代を超えた自然の利用を考え、生物の多様性を減少させず、維持可能な利用 をしていくことが大切です。

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カブトガニの保護と、その対策

日本での生息数と生息地が危機
人間の活動が他の生物の生存を危うくしており、私たちの身近な自然も失われています。

人類の活動、身近な生き物の生息地を、埋め立て・干拓などで著しく減少させてしまった。
また、水質汚染まで加わえ、カブトガニが棲めない環境にしてしまった。
その結果、日本に生息するカブトガニは、約4,000尾に激減した。
カブトガニは絶滅の危機になった。
現在、生息数 約4,000尾は、それぞれの生息地に散在し、ごく少数が生息しているだけ。

山陽地方では、岡山県:日生町・笠岡市笠岡。 広島県:尾道市・竹原市・江田島町。 山口県:秋穂町・山陽町・下関市、
九州地方では、福岡県:今津。 佐賀県:伊万里。 大分県:杵築
四国地方では、愛媛県:東予市など。 生物の生息環境の悪化で、いずれの生息地も危機的な状態

1945年、国内に80,000haあった干潟が、現在、50,000haになってしまいました。
そのうち、約40%は有明海にある干潟なので、全国各地に点在する干潟は非常に狭くなってしまった。

生態系の破壊、生物の絶滅の危機は、人類生存の危機 !!
私たちの生活は、衣食住、紙、医療、燃料などにいたるまで、生物からの恵みを受けて成り立っています。
多様な生物資源を利用することによって、私たちの生活が成り立っています。
カブトガニの血液を利用して、わたしたちの命が救われていることは、典型的な例の一つです。

しかし、人間の経済活動によって、熱帯林、湿原、川、干潟などの生態系を、いちじるしく壊してきました。
近年、動植物が、1日100種以上も絶滅に追い込まれています。
彼らが最も恐れているその影響は、いずれ私たちの生活にも及ぶことになるのです。
動植物がすめない環境は、人間も生きていくことができない環境です。
生物が絶滅の危機にあることは、わたしたちへ「
生物資源の恵みを利用できない兆しであることを警告しています。
つまり、
生物資源を利用することができなければ、私たちの生活も成り立ちません。
カブトガニの血液を利用して、わたしたちの命が救われているのです。

生物の絶滅数
恐竜時代は、1,000年に1種、絶滅していたと推測。
恐竜時代以後 〜人類が登場する以前までは、3〜5年間に1種、絶滅していたと推測。
人類が登場して以来、急激な速さで種の絶滅が進んでいて
1970年代は、1日1種が絶滅し、
1980年代は、1日50種以上が絶滅し、
2000年に入り、1日100種以上が絶滅している、といわれております。


浅海域の生態系の現状
日本は、総延長 約32,800kmの屈曲に富んだ海岸線をもち、海岸に続いて内湾を中心とした浅海域が広がっていて、
そこには干潟、藻場、サンゴ礁がみられます。
現在、自然海岸が約18,000km、干潟が約51,500ha、藻場が約201,200ha、サンゴ礁が約34,700haあり、
沿岸域の生物多様性を特徴づける生態系となっています。

干潟は太平洋岸、瀬戸内海沿岸、九州に多く、とくに内湾に発達する干潟は、小動物の量、種数ともに多いことから、
さまざまな沿岸性の魚類、シギ・チドリなどの鳥類などの重要な餌場、また、渡り鳥の中継地となっています。
干潟は生物のすみかとなるだけでなく、産卵育成の場でもあります。

これら浅海域生態系は、海岸線の人工化、埋立・干拓などの直接改変や、汚濁などの影響をうけています。
高度経済成長期には、都市化や産業の発達にともなって、海岸線の人工的な改変が急速に進められました。
日本の自然海岸は50%を切り、1945年(昭和20年)以降、埋め立て・干拓などによって約40%
干潟が消滅しました。
最近では、埋め立てられる面積は減っていますが、残された干潟やその近くでは、依然、埋立が行われています。


種を絶滅に追い込まないために... 笠岡市が行っている保護対策
生育地の環境整備とカブトガニの増殖事業

1928年 昭和 3年、生江浜海岸の生息地が「天然記念物カブトガニ繁殖地」として国の指定を受けた。
      カブトガニが漁網を破ることで漁師に好かれなかった。
1966年 昭和41年ごろ、富岡湾の干拓・笠岡湾の干拓で広大な1811haを失った。
      指定地の生江浜海岸も含まれていた。

1971年 神島水道を新たに繁殖地として追加指定した。
1975年 カブトガニ保護センターを設立し、カブトガニの保護・増殖に関する調査・研究を開始した。
1990年 カブトガニ博物館を建設し、カブトガニの保護を広くPRできるようになった。
1993年 笠岡市は下水道整備を進めて以来、水質はかなり向上し、魚介類への影響はなく、カブトガニの孵化実験も成功した。

現 在 は 
5年の歳月をかけて飼育した第7齢〜8齢幼生を放流し、人工増殖を行っています。
     それらの保護対策は、行政だけでなく、地域住民ボランティア、各種団体の保護活動も盛んです。
     海岸清掃活動合成洗剤の追放運動など、保護に対する輪は地域の中から広がっています。



どのような保護対策が必要か

  個体・環境の保護だけでなく
    
カブトガニが
生き続けられる 環境再生必要

 破壊したカブトガニの生息地を、もともとあった自然のままに再生・回復させることが最も必要。
 
それぞれの生息地で、種の絶えない生息数を確保することも併せて必要。

それらが欠ければ、カブトガニを絶滅の危機から救えません。


生物保護については、個体保護の活動を行いながら、
絶滅させることのないように、個体の保護・増殖していく。
環境問題については、生物の棲める自然の豊かな環境保全する。 特に干潟の保全再生していく。

 干潟の重要性に早くから気づいた欧州では、1980年代後半からオランダやイタリアの干潟や湿地を回復する試みを始め、
 デンマークには、農地を湿地に戻すプロジェクトもあります。
 また、アメリカでも湿地の消滅を止め「これ以上、湿地をなくさない」大統領宣言もあります。

環境教育については、生物を観察・研究し、生物のつながり、生物と人のつながりなどを理解することで保全につなげる。


私たちは何をすべきか
 
生物多様性保全を念頭に置いて、カブトガニの保全を進める。

地球上の生物は生態系という一つの環のなかで深くかかわりあい、つながって生きています。
生物多様性は 人間という存在にとって欠くことのできない環境基盤を整えているのです。
生物多様性を保全する観点から、
無理な開発を避け水質汚染をおこさないことです。

わたしたちは、さまざまの生物源泉を、衣食住、医薬品などに利用することによって、生活が成り立っています。
さらに、
多様な生物を育む自然は、教育・芸術・観光など、人間にとって有用な価値の源泉となります。
カブトガニの血液を利用して、わたしたちの命が救われていることは、典型的な例です。

生物へ 感謝の気持ちをもって、自然をいたわり、自然環境保全をしていくことが大切です。
自然環境保全は、一部の専門家だけに任せるのではなく、「私たち一人ひとり」がしていくことです。
「次世代の自然の利用」を考え、生物の多様性を減少させず、維持可能な利用を図る。

   1. 各地固有の生物の多様性を、その地域の特性に応じて適切に保全する。
   2. とくに生息・生育する種に、あらたに絶滅のおそれが生じさせない環境保全自然再生する。
   3. 世代を超えた自然の利用を考え、生物の多様性を減少させず、維持可能な利用を図る。
   4. 自然観察会・自然教育などに参加して、
生物多様性保全の必要性学ぶ

生物多様性保全に果たす 自然教育の役割

保全のための活動








 理 解 ・生物の種類
     ・生物たちのつながり
     ・自然のしくみ
     ・人と自然のかかわり
      自然教育
自然とのふれあい
 
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世界のカブトガニ 4種の形態の違い・生息地

北アメリカ東岸一帯とアジア東南海域に、Tachypleus属とLimulus属の2属4 種のカブトガニがいます。

カブトガニ Tachypleus tridentatus   4 種中、最も大きい
 メス 全長 約60cm  重さ 約3.0kg  前縁に へこみがある
 オス 全長 約50cm  重さ 約1.5kg  前縁に へこみはなく、半円形
 生息地 日本(瀬戸内海、九州北部)、台湾、中国大陸東岸、フィリピン、ボルネオ島、ジャワ島、スマトラ島

ミナミカブトガニ Tachypleus gigas
 メス 全長 約43cm  オス 全長 約33cm  オスの前縁のへこみは浅い
 生息地 ベンガル湾、シャム湾、マライ半島、ボルネオ島、ジャワ島、スマトラ島

マルオカブトガニ Tachypleus rotundicauda  尾剣の断面が丸い(他のカブトガニは3角形)
 メス 全長 約29cm  オス 全長 約28cm   オスの前縁のへこみはない
 生息地 ベンガル湾、シャム湾、マライ半島、ボルネオ島、ジャワ島、スマトラ島、パラワン島

アメリカカブトガニ  Limulus polyphemus
 メス 全長 約41cm  オス 全長 約35cm  オスの前縁のへこみは浅い
 生息地 北アメリカ東岸、ユカタン半島一帯

カブトガニの分布(東南アジア産)
アメリカカブトガニの分布
赤色部分はアメリカカブトガニの分布

アメリカ東岸メーン州からユカタン半島にかけての一帯に分布している。

 カブトガニの写真は、著作権所有者:カメラマン佐藤義明氏の
 ご厚意により掲載させていただいております。

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