雷鳥の生態写真・解説 -6

孵化・雛の誕生、育雛、天敵、擬傷行動、家族生活の崩壊、換羽(衣がえ)


孵化後の卵殻

孵化後の卵殻

雛が孵化した後の卵殻...

ライチョウが抱卵期の巣、孵化のようすを撮影することは、
親鳥を脅かして抱卵放棄させたり、また、その生息地に大きな悪影響
を与えてしまうことから、
ライチョウの減少を加速させるため、その保護を目的として撮影しておりません。

を大ざっぱに説明しますと・・・
・ライチョウの巣は、ハイマツの枝の下の地上にあるため、人が立った姿勢で入れない。
・巣を観察・撮影するために這いつくばって入れば、地上の高山植物を破壊してしまう。
・ライチョウは、メスのみが抱卵を行うことから抱卵交代がないため、観察・撮影でメスを追い払うなど、
巣を観察・撮影すれば、ライチョウとライチョウの生息環境に多大な悪影響を与えることになります。

孵化する写真をご覧になりたい方は、雌雄交代で抱卵する鳥類の こちらをご参考に。

孵化 = 誕生
7月上旬最終卵を産むと、すぐに抱卵に入り、20 - 23日後の7月下旬孵化します。



ライチョウの雛(ヒナ) 誕生

ライチョウの雛

孵化直後の(ヒナ)は、おおよそ18g。ヒナは「ピヨピヨ」と鳴きます。
孵化直後の雛は、クリーム色と茶色の暖かい幼綿羽に覆われています。
孵化率は平均、66.7%。10月上旬までの生存率は15 - 40%。
9月中旬頃、雛の体はメス親と同じくらいの大きさに育ちます。
10月に入ると白い毛が見えはじめます。鳴き声はまだ「ピヨピヨ」。



育  雛

ライチョウの育雛

メスが子育て
孵化から12時間ほど母親に抱かれ、羽毛が乾くと巣から離れる早成性の離巣性。
雛は、孵化後3週間ほどで50cmほど飛べるようになり、
80日ほどで若鳥として独立します。
メス親は、5週間ほど抱雛しますが、オス親は全く子育てをせず、メス親が育雛します。
母親は雛の餌となるハクサンイチゲ、チングルマ、アオノツガザクラ、
シナノキンパイなどのお花畑、高山植物の群落にヒナを連れて歩きます。

天  敵
地上のオコジョ、キツネ、テン。 空からのイヌワシ、クマタカなど。
いちばん怖い天敵は、高山植物を踏み荒らし、巣を撮影するヒト。

ライチョウは ヒトをおそれない !?
雷鳥を狩猟禁止して以来、世代交代した現在の雷鳥は、ヒトに脅えませんが、
やはり、いちばん怖い天敵は、高山植物を踏み荒らし、巣を撮影するヒトです。

擬傷行動
雛に接近し過ぎると、母親は片翼を下げ、翼を傷めて飛べない格好をして目を引かせ、
いかにも「私を狙ってください」といっているような行動を『擬傷行動』といい、
母親が自分の身を犠牲にしてまで、子(雛)を守ろうとする『擬傷行動』をします。

擬傷行動はライチョウだけではなく、シロチドリでも見られます。

家族の生活崩壊
雛が孵化して縄張りを解消したオスは、家族の群れから離れて生活をします。
抱卵・育雛に失敗したメスや、メスを持てなかった『あぶれオス』も共同生活をはじめます。



換  羽(衣がえ)

羽毛は周囲の環境に合わせたかのように、羽色が生え換わります。

ここをクリックで写真拡大できます

換羽・衣がえ
9月・メス   9月・オス   10月下旬・オス   11月中旬・オス   11月下旬・オス   1月上旬・オス   2月上旬・メス

換羽はライチョウのみでなく、鳥類はすべて冬羽・繁殖羽・夏羽・冬羽へと換羽します。

換羽・衣がえ...春、繁殖期のオスの羽毛は、黒色地に波形の細かい褐色黄斑点を持ち、全体として黒色に見えます。
この繁殖羽・婚姻色は、縄張りが解消する頃から薄れてゆき、メスの羽毛に似てきます。
オスは赤い肉冠(にっかん)を開かなくなります。
メスは黒色地に幅広の黄褐色の横斑を持ち、全体として褐色に見えます。

、羽毛の色が地味で目立ちにくい訳は、羽毛の色が岩や小石の色と区別がつきにくい方が、
視界が開けた見通しの良い場所で、天敵に見つかりにくいためです。
、羽毛の色が真っ白くなる訳も、それが雪にとけ込むように見え、目立たなくなるのです。
ライチョウの羽毛の色が、居る場所の色にすぐ反応するわけではないため、
カメレオンなどのように保護色ではありません。鳥類は換羽をするためです。

9月に入ると、メスもオスも冬の白い毛が伸びはじめ、冬の厚い毛は、しだいに腹の下に進み、
10月上旬、背中に白い羽毛が見えはじめ、
10月中旬、羽換わりが速くなって、白色の毛に褐色の毛が混じった まだら模様になります。
冬期は真っ白の冬羽になって、雪の上にいるライチョウは目立たなく、あたかも保護色のようです。
真冬ライチョウの脚・足は、爪だけ残して白い毛におおわれ、ウサギの足のようになります。
ライチョウは学名 = Lagopus mutusという、そのLagopusとは、ウサギの足の意味です。
厳冬期の寒さに耐えられるように、脚が羽毛に覆われているためです。




厳冬期のライチョウ

厳冬期のライチョウ

厳冬期のライチョウは真っ白い羽毛になって、オス・メスを見分け難いのですが、
オス(写真左)には『過眼線』があるため、見分けられます。
オスは、メス(写真右)より鋭い感じです。

厳冬期の真っ白いライチョウは、体がスッポリ入る穴を雪原に掘り、
厳寒の高山で、風雪に耐えながら遠い春を待ちます。

そして、ライチョウは春の彼岸頃になると、決まって夏羽に換わりはじめ、
縄張りづくり・巣作り・求愛・交尾・産卵・抱卵・孵化・育雛などの繁殖と
採餌・休息・換羽など、生活の全てが高山で、毎年、規則正しく行われています。

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