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シギ  チドリ  

谷津干潟と三番瀬
シギ・チドリの生活について「渡り鳥」「渡り」「中継地」「繁殖地」「越冬地」「換羽」
シギチドリ の違い ● 羽毛の色の違い 換羽は日照時間で..
くちばしの長さ・形の違い 鳥に歯があるか? ないか? ● 脚の長さの違い
エサのとりかたの違い くちばしの形状が異なる餌のとりかた ● 頭掻きの違い ● 何を食べているのか
シギ・チドリにとって三番瀬の重要性 ● シギ・チドリを守る... 日米ハマシギ調査 ● 干潟保全 自然環境保全
中国的滑稽『漁夫の利』


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谷津干潟三番瀬(Sanbanze)

谷津干潟は千葉県習志野市。北緯35° 東経140°に位置し、全周囲が埋立地。
干潟の周囲は4km未満。 面積は40ha

谷津干潟は東京湾から約200メートルも内陸部にあり、海に全く面していません。
その干潟は、2つの細い川で東京湾へ つながっているだけ。
そのため谷津干潟の干潮・満潮の時間は、東京湾より、およそ2時間遅れ。

谷津干潟の満潮時は水没し、干潮時は干潟のほぼ全域がアオサに覆われた状態で、
鳥たちはエサを捕れません。

三番瀬(船橋市・市川市の沖)は、干潮・満潮に関係なく干潟、浅瀬があるので、
鳥たちは谷津干潟から三番瀬の干潟・浅瀬へ飛翔して採餌、休息をしています。

谷津干潟といっても、東京湾に面した三番瀬と隣接していた当時は干潟でした。
現在、埋め立て地の中に置かれた谷津干潟はプール状ですが、
1993年、ラムサール条約登録湿地となりました。
その正式名称は、
特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約で、
1971年、イランの都市 ラムサール = RAMSAR において締結されたことから
ラムサール条約といいます。

現在、谷津干潟のほとんど全域、 アオサが繁茂して海面を覆い
底生生物(ゴカイをはじめ、カニ、貝類... など)が生息する泥質部分が著しく減少し、
鳥たちは採餌するのが困難な状態で、干潟保全へ急務。

一方、三番瀬 (Sanbanze) は、東京湾。
船橋市(北緯35°東経139°)と市川市の沖に広がる、干潟や浅瀬、約 1600haです。
波が打ち寄せる砂浜に立つことや鳥の視
線で観察、撮影ができ、
水平線の上に広がる大空... 晴れた日には房総半島、富士山を眺められます。

東京湾にある三番瀬の干潟や浅瀬は、潮の循環が良いため底生生物が多く、
それによる高い自然浄化機能で、東京湾の水質浄化にも役だっています。
貝類だけでもアサリ、ハマグリ、バカガイ(アオヤギ)、マテガイ、シオフキガイなどが生息、
年間の漁場、また、春は潮干狩り場となり、
沿岸漁業で生活する人、心を和ます人と水鳥が共生・共存しています。
三番瀬の干潟や浅瀬は、人と水鳥にとって切り離せません。

スズガモ (10万羽)、ミヤコドリ(61羽)、コアジサシ、シギ・チドリ類など、
日本有数の渡来地で、 年間を通して多くの「渡り鳥」が三番瀬に飛来してきます。
建造物が林立していない三番瀬は、水鳥の飛翔の障害にもならず、
人も鳥も休まる優しい船橋海浜公園・三番瀬なのです。


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シギ(鷸)とチドリ(千鳥)について...

シギチドリは、体形、羽毛の色、生息場所、生活などが似てますが、
生物学上、
チドリ目/シギ科チドリ目/チドリ科に分類されています。

シギ、チドリの多くは、毎年、決まった季節に北半球と南半球を飛翔して、
生活の場所を変える鳥で、
『旅鳥』『渡り鳥』と、いいます。

   

夏鳥
春から夏に日本で繁殖し、
冬は暖かい南の国で越冬します。
冬鳥
北の国で繁殖し、
冬は日本で越冬します。
旅鳥
繁殖地と越冬地を往復する途中、
、2回日本に立ち寄ります。

から日本で繁殖し、冬は暖かい南の国で越冬する渡り鳥を、夏鳥といい、
北の国で繁殖し、日本で越冬する渡り鳥冬鳥といいます。

は、涼しい北の国のシベリアやアラスカ方面で繁殖(子育てをする)し、
は、暖かい南の国のオーストラリアやニュージーランドなどで越冬し、
その間を毎年おなじ季節に海を
渡り、往復する渡り鳥旅鳥といいます。

渡りの途中、採食や休憩のため、視界が開けていて見通しが良い
三番瀬の干潟や浅瀬に立ち寄って生息します。
旅鳥が旅の途中で立ち寄る場所を
中継地と、いいます。

(4・5月)、日本へ渡ってくる鳥は、
越冬を終え、南の国から北半球の高緯度地方・ツンドラの繁殖地へ行く途中で立ち寄り、

夏〜
(8・9月)、日本へ渡ってくる鳥は、
繁殖を終えて低緯度の暖かい国の越冬地へ行く途中で立ち寄ります。
つまり、一年間に2回、渡りをしています。

イソシギ、ソリハシシギ、オオソリハシシギ、ダイシャクシギ、 ホウロクシギ 、チュウシャクシギ
キョウジョシギ、セイタカシギ、ハマシギ、ミユビシギ、オオハシシギ、キアシシギ、アオアシシギ
コチドリ、シロチドリ、メダイチドリ、ダイゼン、ハジロコチドリ、トウネン

● シギ・チドリ類を含む『渡り鳥』の一年間の生活

日照時間が長くなる春分の日の頃、体を覆う羽が換羽(羽が生え換わる)して婚姻色の生殖羽(繁殖羽)になり、
この頃から生殖巣(卵巣、精巣)も発達してきます。
北の繁殖地への渡りに備え、中継地で長旅のエネルギー源となる皮下脂肪を蓄え、体重が増加します。
夏は、北の繁殖地で子育てをします。
子育てが終わり日照時間が短くなるにつれ、生殖巣は小さくなり、翼、尾、体の羽を換羽して秋の渡りに備えます。
秋分の日の頃、秋の渡りに備えてエネルギー源となる脂肪を蓄え、体重が増加します。
長旅で脂肪を消耗した鳥は、越冬地へ着くと冬の寒さをしのぐため、たくさんの餌を食べます。
シギ・チドリ類を含む『渡り鳥』は、『渡り』『繁殖』『換羽』を一年を通して、 規則正しく行っているのです。


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シギ チドリ の違い

● 羽毛の色の違い 換羽は日照時間の変化で..

シギの体形と羽毛の色
チドリ目/シギ科の体形は、胴が長い。
羽毛の色は、茶色、灰色、白、黒色など、目立ちにくい色。
繁殖期を迎えた夏は、体を覆う体羽が換羽し、地味な地色にオレンジ色や赤茶色が混じります。
羽毛の色が目立ちにくい訳は、羽毛の色が砂浜や小石の色と区別がつきにくい方が、
視界が開けた見通しの良い場所で、天敵に見つかりにくいためです。

チドリの体形と羽毛の色
チドリ目/チドリ科の体形は、胴が短い。
羽毛の色は、茶色、灰色、白、黒色など、目立ちにくい羽毛の色。
繁殖期を迎えた夏は、体を覆う体羽が換羽し、地味な地色にオレンジ色や赤茶色が混じります。
羽毛の色が目立ちにくい訳は、羽毛の色が砂浜や小石の色と区別がつきにくい方が、
視界が開けた見通しの良い場所で、天敵に見つかりにくいためです。

換羽(羽の抜けかわり)は、季節の日照時間の変化で冬羽から夏羽(繁殖羽)へ、
また、夏羽から冬羽へと変化します。


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● くちばしの長さ・形の違い  鳥に歯があるか? ないか?

シギ    のクチバシの長さ・形
シギのクチバシは、体の大きさに比べて長い。
クチバシの形は、ストレート形、上に反った形、下に反った形、ヘラ(しゃもじ)形と様々です。
 

シギの仲間は、敏感な感覚があるクチバシの先端だけを動かすことが可能なので、泥の穴の中へクチバシを差し込んで、ゴカイやカニなどを挟んで引っ張り出すのに好都合です。

チドリ のクチバシの長さ・形
チドリのクチバシは短い。クチバシの長さは頭の直径より短い。
チドリの仲間のクチバシは、ほとんどストレート形。

今から1億5千万年前、恐竜が栄えていたごろ生息していた始祖鳥の化石から歯が見つかっています。
現在、生きている鳥には歯がありません。空を飛ぶ鳥の体重を軽くする必要上、
進化の過程で歯がなくなりました。 鳥は歯がないので、餌を丸飲みしますが、
筋胃(強力な筋肉で囲まれた胃袋)は、食べたものを細かく砕いて消化することができるのです。
筋胃は、私たちが食べ物を噛み砕く歯と同じ働きをします。


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● エサのとりかたの違い くちばしの形状が異なる餌のとりかたの違い

シギのエサの捕り方
頭を下げたまま歩いてエサを探します。
長いクチバシを泥の中に差し込んで捕食します。

・ストレート形のクチバシを持つシギは、泥の中にもぐっているゴカイやカニなどを引っ張り出して食べます。
(キョウジョシギは、石や貝殻をひっくり返し、その下に隠れていた虫を見つけて食べます。)
・上に反った形のクチバシを持つソリハシセイタカシギは、上に反った細いクチバシを水面につけてエサを探って食べます。
・下に反った形のクチバシを持つホウロクシギは、泥の中や岩の隙間のゴカイやカニを捕まえて食べます。
・ヘラ、スプーン形のクチバシを持つヘラシギは、クチバシの先端を水の中に入れて左右に振りながら餌を探って食べます。

チドリのエサの捕り方
干潟を歩き、エサを見つけてもすぐエサに飛びつかず、
エサを見て見ぬふりをして、エサが油断した瞬間すばやく駆け寄って、
クチバシにエサを挟んで引っ張り出し、エサをとっては頭をあげます。

・ストレート形のクチバシを持つチドリは、泥の中にもぐっているゴカイやカニなどを引っ張り出して食べます。

シギ・チドリは、何を食べているのか


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● 脚(あし)の長さの違い

シギの脚(あし)
脚は、長いものが多いので、浅い場所で羽毛を濡らさずエサをとることが可能です。
趾(あしゆび)は、ぬかるんだ泥の干潟を歩いても足が潜らないように、長くて広がっています。

チドリの脚(あし)
脚は、長いものが多いので、浅い場所で羽毛を濡らさずエサをとることが可能です。
趾(あしゆび)は、ぬかるんだ泥の干潟を歩いても足が潜らないように、長くて広がっています。
鳥の趾は4本が基本型で、チドリの後趾の一本が退化しているものが多いのは、
速く走る、速く歩くのに都合が良いためです。
千鳥がジグザグに歩くことから、酔ってフラフラ歩くのを「千鳥足」といいます。

鳥の足と脚


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● 頭掻きの違い

クチバシが届かない頭の羽毛を羽づくろい(手入れ)するとき、長い脚を使います。
それを「頭掻き (あたまかき)」といいます。
頭掻きには、脚を翼の外から頭へ持っていく「直接頭掻き」と、
翼の内側をくぐらせて頭へ持っていく「間接頭掻き」の二通りがあります。

シギの頭の掻き方
シギの頭の掻き方は、写真のように「直接頭掻き」をします。

チドリの頭の掻き方
チドリの頭の掻き方は、翼の内側に脚をくぐらせて掻く「間接頭掻き」をします。
この写真はセイタカシギの「頭掻き」ですが、セイタカシギはシギの中で最もチドリに近いので、
チドリと同じように「間接頭掻き」をしています。


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● シギ、チドリは何を食べているのか

シギ、チドリがエサをとることができるのは、潮が引いて泥底が出た干潟や浅瀬。
干潟には、シギ、チドリのエサとなる底生生物が生息しています。
水に潜ることができないシギ、チドリは、干潟や浅瀬に来て、
ゴカイ、カニ、貝...など、稀に魚も食べています。


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● 長距離の渡りをするシギ・チドリにとって、
三番瀬の干潟・浅瀬の重要性

シギ・チドリの仲間の多くは、北半球の高緯度地方の繁殖地と
南の越冬地を往復する長距離の渡り鳥です。

長距離の渡りをするためには、多量の燃料(皮下脂肪)が必要です。
(キョウジョシギは、200kmの飛行で1gの脂肪を消費します。 )
渡りの途中、三番瀬の干潟・浅瀬に立ち寄ったシギ、チドリたちは、
多くのエサを食べ休息し、エネルギーを補給して目的地へ向かう渡りに備えます。
燃料を蓄えるためには、中継地に滞在しなくてはなりません。
三番瀬を中継地としたシギ・チドリたちにとって、重要な干潟と浅瀬なのです。
潮通しの良い三番瀬は、残された大切な(人が創ることができない)天然の干潟・自然環境なのです。

三番瀬は日本有数の渡来地。年間を通して多くの「渡り鳥」が建造物を避けて飛翔する必要がない
人にも野鳥にも優しい三番瀬なのです。

三番瀬で、1994〜1999年に確認された野鳥の種類は約170種。


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● シギ・チドリを守るために.....日米ハマシギ調査

鳥の種類によっては、渡りの時期や飛ぶ距離はさまざまですが、
シギ・チドリ類は、海をまたいで10,000km以上の距離を飛んで渡りをします。

しかし、シギやチドリ類は、どの生息地からどこを経由して、どの繁殖地・越冬地へ移動するのか、
という渡りのルートや、どこの中継地を経てくるのか、まだよく分かっていません。
シギ・チドリの渡りのルートや中継地が明確になれば、具体的な保護の取り組に備えられるため、
日米の研究者たちは、1991年頃から鳥の脚にフラッグ(旗)とよばれる標識をつけ、
観察者たちから観察情報を集め、標識調査が行われています。

● ハマシギの繁殖地と越冬地

● データ報告、お問い合わせは
山 階 鳥 類 研 究 所 標 識 研 究 室
〒 270-1145 千葉県我孫子市高野山115
Fax. 0471-82-4342


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● 干潟の保全 自然環境保全

日本は、四方が海に囲まれた海岸線の長い島国ですが、
その海岸線は埋め立てられてしまって、コンクリート化した直線的な海岸線。
1945年には80,000ヘクタールあった干潟が、現在、50,000ヘクタールになってしまった。
そのうちの約40%は有明海にある干潟なので、全国各地に点在する干潟が、
いかに少ないか お解りいただけたと思います。

干潟の重要性

干潟の泥・砂地の環境には、ゴカイ、貝類、カニなど様々な底生生物が生息していて、
水鳥や魚の重要な生息場となっています。
三番瀬に生息する潮吹き貝(シオフキガイ)など3種類の貝だけで
三番瀬付近の全海水を 2〜5日で浄化します・・・(国立環境研究所)。
三番瀬の高い水質浄化機能を下水処理に当てはめると、1日あたり97,100立方メートルで、
それは約 130,000人分に相当します。

干潟の重要性に早くから気づいた欧州では、
1980年代後半からオランダやイタリアの干潟や湿地を回復する試みを始め、
農地を湿地に戻すプロジェクトがデンマークにもあります。
アメリカでも湿地の消滅を止め「これ以上、湿地をなくさない」と大統領宣言もあります。

日本の干潟保全は、今後どのように変化するのでしょうか。
三番瀬、諫早湾 ...など、日本各地の干潟は日本領土内の干潟であっても
国際間を行き来する『渡り鳥』にとっては『共有地』であり、
重要な『中継地』となっている干潟なので、保全は日本だけの問題だけではなく、
生物の『共有地』として日本は国際的な信用を持てるように
保全しなくてはならないのです。

『水鳥の生息地として国際的に重要な湿地』であるラムサール条約登録地は国内に11箇所。
そのうち登録されている干潟は島国の日本で、わずか2箇所・・・少ない!
今後、増えていって欲しい。

外国から届くe-mailで、諸国の人々は口々に
「四つの大きな島である日本は、美しく広い干潟が多いのでしょう」と言う。

しかし、ラムサール条約に登録されいてる谷津干潟でさえ、周囲4キロ未満。
海岸線を持たない谷津干潟は、海水の流入出が極度に悪く、繁茂したアオサが干潟を覆い、
底生生物が育たず、悪臭で耐えられない日もある。
谷津干潟が満潮時は露出した泥砂地がほとんどなく、
水鳥は泥砂地がある三番瀬に飛んでいってしまって、谷津干潟に鳥はいません。

したがって三番瀬は、日本のみでなく国際的に重要なのです。
自然環境保全・干潟保全なしでは・・・。

海鳥の場合も絶滅の危機に陥っています

世界で見られる海鳥は 300種
日本で見られる海鳥は 100種
そのうち日本で繁殖している海鳥は 38種
しかし、
38種のうちの23種(60%以上)は絶滅の危機に陥っています。

自然環境保全は一部の専門家だけに任せるのではなく、
私たちも一人一人が自然をまもらなければ ならないのです。


● 中 国 的 滑 稽

● 中国の故事、日本の『諺・ことわざ』にあたる...『漁夫の利』は滑稽な話。
『漁夫の利』とは、 当事者が争ってる間に第3者がその利益を横取りすること。

シギが、貝の身を食べようとして、クチバシに挟みました。
ところが、驚いた貝はシギのクチバシを貝に挟んで閉じてしまったのです。
シギは貝の身をクチバシに挟んだまま離さず、シギのクチバシを挟んだ貝も閉じたまま離そうとせず、
シギと貝が争っていました。
それを見つけてやって来た漁師(第3者)が、貝とシギを捕まえて利を得た、という話です。

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